ARTFACTORY城南島のスタジオで作品制作を行っているアーティストの皆さんを少しずつご紹介していく企画「Artist Report」。
第3回目は「やましたあつこ」さん、2022年7月1日(金)~8月28日(日)まで“artcafe TOAST AND HONEY”で個展「旅立ちのファンファーレ」を開催されます。
(”TOAST AND HONEY”は千葉県成田市の森と里山を舞台にランドアートプロジェクト”ふわりの森”の入口にあるアートカフェです。)
制作の様子とインタビュー内容を少しだけ公開させていただきます!
ぜひご一読ください!
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やましたあつこの作品制作はここから始まる。
刷毛を使って、薄い木のベニヤ板に乳白色の液体を四隅にまでしっかりと塗っていく。
木のヤニが滲み出てこないようにヤニ止めシーラーを塗っている。
なんでも油彩画には飽きてしまい、
最近はパネルに和紙を貼り、その上からペンで描いているという。
次々と塗っては、床に並べていく。
丸まった和紙を伸ばしていく。
床に置いてあった額縁を和紙の淵に無造作に置いていく…。
シーラーが乾いたら和紙をカットし、板に貼っていくそうだ。
創り始めた作品は、”ふわりの森”での滞在制作後に控えている展示に出展する作品らしい。
では早速、やましたあつこさんにインタビューしていきます!
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― 下書きなしで描いているのは本当ですか?
やました:小さい時から下書きするっていう概念が無くて、「これで決めてやる」みたいな気持ちで描いていたので、身についちゃいました。
― “邪魔のない幸せ” の物語のシリーズがずっと続いているという認識ですが、ドローイングの手法を交えて描いているとのことで、やましたさんが見て感じたことなどが作品に影響していると思うのですが、物語のテーマや描くモチーフは、日頃の出来事と関わりがあるのでしょうか。
やました:この世界は小学校の時からあって、自分を守るために創った世界、その中の話を描いているというイメージです。その話は突然できるので、創っているというよりは、突然自分の中に出てきます。日々の積み重ねや興味のあること、最近は自己流ですけど…去年から精神医学の勉強もしていて、その経験や知識が積み重なって、急に「バンッ」と映像的に出てきます。
― “赤い髪の少女と青い髪の天使” その2人が出てくる映像の一瞬を切り取って描いている感じ?
やました:一瞬を切り取って描いているという感じです。そのキャラクターも変化してきて、最近は赤と青という感じではなくて、二人が似てきている。もうちょっといそうな感じ。
― 最近判別できないなと思っていました。
やました:判別できない双子みたいなかんじになってきています。
― 描き方も一気に変わりましたよね。
やました:周りがカラフルな作品がありますが、あの作品で初めて動物が出てきています。
その時はズーフィリア*1の本を読んで調べているときで、この本を読んで結構納得しちゃって。
「人間と動物は対等だな」と。普通はペットと人というかんじですが、それだと上下関係があるし、上下関係があるのは描きたくないなと思っていて、でも人間と対等に接するっていうことを知って、物語の中にも動物が出てくるようになりました。
― そういうことだったんですね。じゃあ最近はまた別に?
やました:最近はデンドロフィリア*2について調べていて、でもデンドロフィリアに関しては、全く文献が出てこなくて。海外のサイトを調べても全然出てこなくて。無機物に対して好きっていう人もいて、ベルリンの壁と結婚したとか、エッフェル塔と結婚したとか…。
何かそういうのが好きなんですよ。そういう人の心理とか、人の可能性があると思っていて、なんかすごいじゃないですか…。ベルリンの壁、愛してる!ってなるのすごいなと思って、「人間の可能性って無限大だな」と思って、結構そういうのが好きで調べています。
植物性愛については、調べてもあんまりでてこないから、無機物性愛*3に近いのかなと思って調べていて…。
対物性愛っていうのがあって、例えば、その概念が好きっていう人もいて、あの会社が好きだとか、あの会社を愛しているとか、あの会社の名前を聞くだけでドキドキするとか…。色んな性的嗜好があるっていうことにすごい興味があって調べていて、調べて自分の中で納得すると、絵に出てきたりします。
小児性愛*4っていうのもあって…現代では小児性愛者の人は犯罪者扱いされているけど、昔はゲイもレズビアンも頭がおかしいとされて、犯罪者扱いされていて、でもその時代には小児性愛は許されていたり、文化として受け入れられていて、今は許されていないけど、だからといって絶対危害を加えるわけではないと思うし…。
赤ちゃんが好きな人も欲情とかではなくて、赤ちゃんを見るとすごい温かい気持ちになるとか…。
犯罪になっていることの方が取り上げられているけど、今の倫理を理解して自分なりに上手くやっている人もいる…
「なんか偏見がすごく嫌いなんですよ」
自分が小学校の時はもっと偏見があって、ニューハーフもいなかったし、お姉が芸人的にテレビに出演とかもなかったですし、芸能人が40歳差で結婚したら「金だ、金だ」みたいに言われたりとか…。
当時の自分は何でこんなに騒がれているのかがわからなくて、「何でそんな偏見があるんだろう…別に良くね」と思っていました。根底にそういった偏見が嫌だっていうのがあって、「ちゃんと知ろう」みたいな気持ちがあるんだと思います。
以前の油彩画にも植物は描いているけど、あくまでレイヤーというか女の子が引き立つように描いている。
今描いている作品は、女の子と同じくらい植物が目立つように描いています。
― すごい以前にも増して植物に覆われているから、森の中にいるのかと… “ふわりの森” とちょっと関連しているのかなって思っていました。
やました:全然関連してない(笑)
“ふわりの森”に行きたかったのは、自然がすごく多いから体感してみたかったんですよ。
デンドロフィリアに関して文献が全く無かったので、自分がデンドロフィリアについて知ろう、なるべくわかろうという気持ちがありました。今の自分のためにも、自然が多い”ふわりの森”に行ってみたいなという気持ちはありました。
ペインティングやドローイングで自身の中に現れる物語を写し描いている、やましたあつこさん。
彼女が描く世界は刻々と色を変えますが、”邪魔のない幸せ” の物語は続いています。
ありがとうございます!
では、今回の個展についても教えてください。
― 成田空港近郊の広大な自然を舞台に開催されている現代アートプロジェクト ”ふわりの森” のアーティスト・イン・レジデンス2022の招聘アーティストに選ばれたそうですね。
今回の個展の会場 ”artcafe TOAST AND HONEY“ でも壁画を制作されるそうですね。
やました:そうですね。今回”ふわりの森”では、壁画っていうかライブペインティングで、”ふわりの森”の入口が全部窓ガラスなんですけど、そこに白いペンで一発で描くっていうのをやります。
一応白いペンの予定ですが、現地で“ふわりの森”の方々が一緒に手伝ってくれるそうで、画材を買うときに使う道具とかも一緒に決めると思うので、変わるかも知れません。
― 展示会場や現地で制作されるならではの魅力みたいなものはありますか?
やました:やっぱ普段と違うところで描けるっていうのと、今回は特に自然を見ながら描けるのは魅力的です!
*1 ズーフィリアとは、犬や馬など人間以外の動物に性的感情や欲情を持つ動物性愛。
*2 デンドロフィリアとは、「dendro=樹木」。樹木を中心とする植物への愛情を指す語である。樹木や植物に対して性的魅力や欲情を感じる性的倒錯の一種。
*3 無機物性愛とは、対物性愛に等しい。生物ではない建物や物に対して、愛情を抱き、性的に惹きつけられる性的嗜好の一種。
*4 小児性愛とは、思春期以前の幼児や小児(通常13歳以下)を対象とした性愛、性的嗜好を持つこと。
ありがとうございました!!
やましたあつこ 個展「旅立ちのファンファーレ」は2022年7月1日(金)~8月28日(日)まで、”artcafe TOAST AND HONEY”で開催されます!!
どのような展示空間になっているのでしょうか。
ぜひ皆さん足をお運びください!!
【展覧会情報】
「やましたあつこ 個展 旅立ちのファンファーレ」
会期:2022.7.1(金)~8.28(日) ※入場無料
時間:金 18:00-22:00 / 土・日・祝 12:00-17:00
場所:artcafe TOAST AND HONEY, ふわりの森(千葉県成田市大竹295)
休館日:月・火
※アポイントメント制:水-金12:00-17:00で観覧予約が可能。
《関連プログラム》
7月3日(日)やましたあつこライブペインティング
13:00-14:00 ライブペインティング
14:00-17:00 交流会
“ふわりの森” アーティスト・イン・レジデンス
やましたあつこ「旅立ちのファンファーレ」特設サイト
https://www.fuwarinomoriart.jp/air2022/
やましたあつこ Atsuko Yamashita | ART FACTORY 城南島 アーティスト紹介ページ
https://www.artfactory-j.com/studio/artist/detail/atsuko-yamashita/
やましたあつこ Webサイト
https://atat000x.wixsite.com/siatsuko/statement